MAMORU JAPAN×東京大学 目黒公郎教授とJSCE公益社団法人土木学会による分野横断ワークショップを開催

東日本大震災から13年が経過した2024年3月11日、土木学会の講堂にて、東京大学教授で大学院情報学環総合防災情報研究センター長である目黒公郎教授と、株式会社MAMORU JAPANが運営支援を行うワークショップ「国難災害に叡智で立ち向かう―複合・巨大災害の全貌解像と横断的対応体制の提案―」が開催されました。

MAMORU JAPANは自然災害など有事に対するレジリエンス能力を備えた持続可能な世界の実現を目指し、レジリエンス能力向上に取り組むクライアント企業の企業価値向上を支援しています。

本ワークショップは、今後起こりうる首都直下型地震や南海トラフ巨大地震などの激甚型災害を対象とし、他学会や官・民を含む他分野体制で、時系列・空間的広がりを持つ災害の全体像を具体的に描きだし、その背景に存在する課題や必要な対策を整理し、最終的に今後取りうるべき対策を提言としてまとめることを目的として行われました。

ワークショップの初めに行われた目黒教授による基調講演では、一つの大きなポイントとして、“想像できないことに対応はできない”ということが挙げられました。過去のワークショップや実際の地震発生後において、専門家たちの専門分野のみでの知識をベースとした深堀した案や対応はあったものの、専門性の低いところには言及ができておらず、知識不足、洞察力不足から地震災害の対応が後手に回り課題が浮き彫りになりました。災害発生後の具体的なイメージを持っていなければ、実際に発生した際に対応することは難しいです。身の回りで起こること、そしてさらにその先に次々と起こることを想定していなければ、有事対応は不可能です。

過去にも日本には災害が続く困難な時代がありました。例えば、19世紀後半の江戸幕末・安政には複合災害(東海・南海地震、江戸暴風雨、感染症流行)が立て続けに発生し、そこに外交でも大打撃を受けました。災害が起きインフラが機能しなくなれば衛生面が悪化し、そこに疫病なども発生し、様々な事態に見舞われることになります。

これから予期される首都直下型地震や南海トラフ巨大地震は、過去の地震とは国内・国外の状況が全く異なります。現在よりも人口が減少し、経済状況もより厳しくなると想定される中での、“貧乏になっていく中での総力戦” であり、現状の防災意識で十分に対応されているとは言えない状況です。これからは個人、そして法人がより、それぞれにおいてどのように災害対策をしていくかを考えていかなければなりません。現在では、行政においても民間においても災害対策=コストと認識されがちですが、被害を最小限に抑えるために常時からレジリエントで在るための対策=バリュー(価値)へと認識を変えていく必要があります。そのためにも、個人や法人に働きかける防災ビジネスが求められています。

また、日本では過去の災害から社会インフラが整えられていきましたが、毎年のように各地で発生する災害、時間の経過とともに老朽化が進んでいます。インフラは一度完成したらおしまいではなく、常に状況を分析し、その時の環境、状況にあったものにチェンジしていかなければなりません。今後の地震に備えて、インフラの再整備も必要とされています。

基調講演に続くワークショップでは、社会インフラ関連業者や、心理学ほか大学関係者、防災アナウンサー、不動産業者、テロ対策の専門家、投資家など、様々なバッググラウンドを持つ30名の参加者を6つのグループに分けディスカッションを実施しました。まず、大規模災害が発生し、最悪の事態に陥った際に起こりうることを各チームで洗い出していきます。

物流が途絶える、その結果、常備薬が手に入らず生命維持が難しくなり、犯罪の発生や国防の低下、金融が破たんする….といったシナリオや、備蓄品だけでなく各インフラのメンテナンス不足や人手不足、生活弱者へのケアが行き届かなくなること、一次産業の超高齢化、災害時におけるメディアの偏向報道やメディアの在り方まで、多くの意見が飛び交い、活発な議論が行われました。

各チームによる最終発表では、今後 産官学で必要になる取り組みとして、以下のようなアイディアが挙げられました。

(一例)
・防災・有事におけるリーダーの明確化
・土地法の改正と土地管理の見直し
・外貨準備金の十分な確保
・首都圏への一極集中の解消
・各企業へより実践的な訓練を義務付けし、企業の取り組みを可視化
・防災対策をしている企業に税制面優遇などを導入
・農業や食料生産の活性化
・20歳から1度みな必ず自給自足を経験する制度
・オフグリッドの実現、代替インフラの建設
・防災を公教育での必須科目にする
・子どもが自給自足を学べる機会を用意 等

今回のワークショップを通し、日本が災害大国と呼ばれながらも、まだ有事の際に万全の準備ができているとは言えない状態であることを、我々MAMORU JAPANも参加者とともに実感しました。

有事の際には、企業も個人も、国や行政に頼り切らず、自分たちでできることは自分たちでやる前提の対応が求められます。この国に生きるひとりひとりが、自分事としてこれから起こりうる国難級災害を捉え、考えていく必要があります。

MAMORU JAPANは、今後も東京大学とコラボレーションしながら、企業の防災力向上に資する事業を続けてまいります。

(記:岩浅 りか)